なぜ依存症は改善しないのか?

家族に依存症者がいる場合、その家族は本人はなぜ依存行為を止めないのか疑問に
思ってしまうことがあると思います。
依存行為を止めるように何度も伝えているのに、本人は何度も繰り返してしまう。
家族で何度も話し合いをしたり、カウンセリングにも通ったけど依存行為が止まら
ないという背景には、家族のイネイブリングという行為が影響している可能性が
あります。

依存行為の継続を助けるイネイブリング

イネイブリングとは、依存症者が依存行為を続けることを支援する行為のことを
言います。
そして、イネイブリングをしている人のことをイネイブラーと言います。

例えば、ギャンブル依存症の夫に対して、妻がギャンブルを止めるように言って
いるけど、夫がお金を求めてきたら渡してしまうという行為、
買い物依存症の娘が、買い物ができないことにイライラして家族に暴言を吐いたり、
暴れたら買うことを許してしまう行為などがイネイブリングに該当します。

依存症者は、イネイブリングによって依存行為はしてはいけないと言っている家族
に対して、嘘をついたり暴れたりしたら、依存行為を続けることができるという
学習をしてしまいます。
その学習によって、家族にイネイブリングをさせるための方法を何度も繰り返す
ようになり、その結果として依存行為も繰り返してしまうのです。

依存行為の前にイネイブリングを止める

依存症者に依存行為を止めさせるためには、まずイネイブラーとなってしまって
いる家族がイネイブリングを止めなければなりません。

カウンセリングの中でもイネイブリングを止める必要性を伝えると、本当の
問題行為を続けているのは依存症者なのに、自分の方が改善を求められること
に納得がいかないと感じてしまう人もおられますが、依存症になっている人は、
周囲にイネイブリングをしてくれる人がいると、依存行為を続けても良い、
依存行為が続けられると無意識に思っているので、依存症が改善しないのです。

もしあなたの家族が依存症であり、依存症者に対する自分の普段の接し方が
イネイブリングにあたると感じておられるのであれば、それを止めることから
始めてみて下さい。

イネイブリングを止めるためにはカウンセリングへ

イネイブリングは良くないことだと思ってもなかなかやめることができない
という人もおられます。
それは、依存症だけでなく、イネイブリングもその人の認知や思考が影響して
起こしている行為だからです。

実は、イネイブリングをしてしまう人は、機能不全家族で育ったという人も
少なくありません。
いわゆるアダルトチルドレンのことです。
両親の理不尽な要求を聴いてきた人、家族の影響で自分が苦労する環境で
育ってきた人は、自分の負担を掛ける依存症者との生活が、どこかしっくり
きてしまうところがあり、依存行為を続けることによって負担を負わされる
ことを受け入れてしまっている場合があるのです。

上記のような理由がイネイブリングの背景にあると、自分の心の課題を
解決しなければ、依存症者の言動によってイネイブリングとなる行為を
してしまいます。

依存症の相談には、親子や夫婦でカウンセリングに通っている人も多いのは、
イネイブリングという問題が依存症の改善を妨げているからであり、その
背景にイネイブラーとなっている人の心の課題が関係しているからです。

家族に依存症者がいることによって自分の心の課題の解決に取り組むことに
なるのは辛いことだと思いますが、カウンセリングではカウンセラーが支援
しますので、家族の依存症改善のために一緒に取り組んで頂ければと思います。

記事の投稿者


心理カウンセラー衣川竜也