依存症は何か

「依存症」とは、日常生活に支障をきたしていても、特定の物の摂取、特定の行動を
止めることができない状態であり、一旦止めたとしても再発する状態です。
依存症は、大別すると2つのタイプに分けることができます。
1つは「物質への依存」、もう一つは「プロセスへの依存」です。

物質への依存

物質への依存とは、アルコール、薬物、タバコなど精神に影響を与えて依存状態を生み出す
ものへの依存です。
依存性のある物質を繰り返し摂取することで、以前と同じ量や回数では満足することができ
なくなり摂取量や回数が増え続けて、その物質がなければ精神状態を維持できないほど悪化
することもあります。

行為(プロセス)依存

行為(プロセス)依存とは、ギャンブル、ゲーム、ネット、買い物、性行為、窃盗、過食、
自傷、
などの特定の行為が止められなくなる状態です。
物質依存のように直接健康状態にダメージがあるわけではありませんが、生活習慣が乱れ、
健康状態、経済状況、人間関係、社会的立場に問題を生じさせてしまいます。

依存症の人が持つ心理的特徴

依存症は、別名で『否認の病』と呼ばれています。
これは、依存症の人の特徴として否認の心理という、自分の問題点を認めない心理的
傾向があるからです。
依存症の人は、『自分は依存症ではない』、『自分の意思でいつでも止められる』、
『反省しているから再発はあり得ない』、という思いを持っています。
また、自分の依存行動を隠すために嘘をつくことに抵抗がありません。
すぐばれるような嘘をついて、嘘がばれても平気で開き直ります。

依存症は、この否認の心理が強ければ強いほど深刻だと言えます。
カウンセリングでは、依存行動が止まっているだけでなく、否認の心理の強さ
を改善の目安としてみています。

依存症になる人の特徴

誰もが依存症になってしまう可能性がありますが、依存症になりやすい人は存在します。
カウンセリングでたくさんの依存症の当事者、ご家族の話を聴いていると依存症になって
しまう共通の特徴が分かってきました。
依存症になる人が少しでも減るように、依存。症の克服を目指す人のヒントになるように
依存症になる人の特徴について説明したいと思います

家族に依存症の人がいる

依存症を改善するカウンセリングを行っていると、依存症の当事者の家族、特に
両親のどちらか、もしくはどちらもが依存症であるケースが多いと感じます。

親が依存症であるということは、親が何かに依存していて必要な養育を受ける
機会を失っているというだけでなく、親の依存症者特有の思考パターンを引き
継ぎやすいため、子供が成長する過程で依存症になりやすい思考を身に着けて
いる可能性があります。
その思考パターンは、現実逃避的、自分の否を認めない、短絡的という特徴が
あります。

理不尽なことに対する我慢強さ

依存症になりやすい人は、理不尽なことに対して我慢し続けてストレスを蓄積
してしまう人がいます。
ストレスレベルが高くなると理性的な思考力が低下するため、欲求に従った
行動を選択しやすくなります。

依存症の当事者の話を聴いていると、職場や家庭などで理不尽な我慢を続けて
いる人も多く、我慢し続ける中でストレスを和らげるために何かに依存して
しまうようです。

未来予測をする力が弱い

未来予測をする力が弱いという点も依存症になりやすい人の特徴です。
未来予測が弱い理由には、認知症や発達障害の影響もあります。
認知症や発達障害なら、誰もが依存症になるわけではありませんが、関連性
はあることが医学的にも明らかになっています。
また、ストレスの影響で脳の働きが低下していることも未来予測をする力を
低下させてしまいます。

未来予測ができないと、自分のしようとしている行動によって、次にどんな
展開を招くのかを冷静に予測することができないため、安易に刺激を求めて
依存行動を選択してしまいます。

依存症になる可能性に対するカウンセリングでのアプローチ

依存症になりやすい人は、上記で説明したような特徴を持っています。
それが1つの場合もあれば、複数の場合もあるのですが、カウンセリングでは依存症
になる可能性に対して適切にアプローチをすることを意識して話を聴いています。

親子関係、理不尽なことへの我慢強さ、未来予測力は、それぞれ違ったアプローチが
必要になるため、話をよく聴きながら適した情報を提供したり、アドバイスを行って
います。
また、生活の中で行ってもらう具体的な対策を提案することもあります。

依存症を改善するには、ご本人に依存行動を止めている期間に行動につながっている
心理的な要素へのアプローチを適切に行っていく必要があるため、一旦は自分の意思
で行動が止まっていてもカウンセリングを受ける必要があるのです。